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戦利品の金銀が貨幣に


 戦利品の貴金属で自国の貨幣を製造したという例は、マケドニアのアレクサンドロス3世以来、別に珍しいことではなかった。
しかしながら何処で奪ったか、はっきり貨幣上に刻んだ例は滅多に見られない。

 イギリスは1663年以来、貴金属貨幣が何処からもたらせれたか、マークを刻むようになった。(銀貨は1666年)
この年はアフリカのギニア産の金貨が初めて生産され、国王チャールズ2世の肖像の下に<象>のマークを記した。
やがてこれは<象と城>のタイプにと変化するが、そのうちにこれが慣習となったのである。
 1702年のこと、イギリス艦隊はスペイン本国西部のヴィゴ湾――そこにあった敵の輸送艦隊を攻撃した。
これは殆ど無警戒だったことから完全に成功を収め、新大陸から運ばれた貴金属を捕獲した。
主として8レアル銀貨であり、総数は1100万枚に達したのであった。
この大量の戦利品の利用は直ぐに決まり、造幣局長のアイザック・ニュートンの下、
アン女王の肖像の下にVIGOと刻んで金貨と銀貨が発行された。
まず1702年にシリング銀貨。
次いで翌03年に6ペンス、シリング、ハーフギニー、ギニー、それに5ギニー金貨もこの年に登場している。
 捕獲した金の総量は276ポンド(約125㎏)と少なく、このため金貨の製造数は僅少に終わる。
とりわけ5ギニー金貨は極端に少なく、イギリス金貨の珍品の代名詞となった。

もちろん他の2種の金貨もまた、珍しい存在として知られる。
 それから40年ほどして、大西洋側から太平洋に進んだイギリス艦が、リマとフィリピンを結ぶ航路を進み、
ついにスペインのガレオン船を捕獲した。
このとき少量(VIGOよりは多量だった)の金と1トン以上の銀貨を奪い、意気揚々とイギリスに帰還したのである。
 この艦長――ジョージ・アンソン大佐は一躍海軍大臣に任命された。
そしてVIGOのときと同様、今回も国王ジョージ2世の肖像の下にLIMAの文字が刻まれた。
 6ペンス、シリング、クラウン銀貨は1745年と46年だけに発行されている。
こちらの方がVIGOより製造数は多い。
 近世から近代にかけてのコインで、このような戦利品の意味を有する文字が刻まれたケースは殆どない。
VIGOもLIMAもスペイン側の警護の手抜かりを示すものだけに、スペインは国家の恥を後世に残してしまった。


イギリス2ギニー金貨1703年 VIGO アン

イギリス2ギニー金貨1703年 VIGO アン




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プロフィール

Ms CoinExpert

Author:Ms CoinExpert
Ms CoinExpert 吉岡 美栄
外国貨幣研究家、元ジェミニ代表の平木啓一氏の下6年間、アンティーク貨幣売買に携わり、
2013年11月にCoinExpert.LLCを設立。
Managing Directorとして日々奮闘中。

 

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